SOUNDLESS ＶＯＩＣＥ設立９年目の物語
　counseling room 2003-2011　

『あなたがいきるには、あなたの物語が』　

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こんにちは。菊池　寿です。今、こうして読んで下さっているあなた、どうもありがとう。こうした出会いが喜びです。嬉しいです。

あなたが御覧になっている、カウンセリングルームSoundless voiceは、2003年6月より運営を開始し、現在9年目を迎えました。なぜ、これほど多くの方にご相談いただけたのか、不思議な気持ちがします。2003年にわたしが書いた設立物語「相談の選択肢」を読み返し、カウンセリングをご利用した方々の感想を読み直し、色々な感慨が湧いてきて、今、パソコンの前で、キーボードを叩いています。

わたしたちの物語

胸の内に湧き上がるのは、喜びや楽しみ、哀しみや寂しさ、つらさをを共にしたあなたとの記憶、あなたの物語です。両親だからこそ、友達だからこそ、親しいからこそ言えない悩みや愚痴、職場ではもらすことのできない本音、強がってしまうあなたの本当の想い、表面的な付き合いに疲れたあなたの深い声、不安で身動きがとれなくなったあなた、周囲に合わせて自分を見失ったあなた、同級生に会うのが嫌になったあなた、パートナーや両親とのことで悩んでいるあなた、年齢に伴なって生じた責任を背負ったあなた、周りに人はいるがいつも孤独なのだと言うあなた、病気とたたかうあなた、介護に疲れたあなた、死別をかなしむあなた、なぜ生きるのか？根源的な問いに向き合い模索するあなた、そして、多くのあなたが暗闇の中に一筋の光を見出したときの喜び、静けさ、笑い声。そうしたあなたの物語がわたしの底にあり、それは今、胸のところに湧き上がってきています。この感じを言葉にすると、感謝、という短い語がぴったりなきもちがします。

わたしもあなたに学びました。あなたのおかげで成長しました。あなたの物語はまた、わたしの物語でもあります。同じ時代に生きる、わたしたちの物語です。

あるとき、70代の女性が言いました。「わたしは、いままで色々なことがあったの、別に悩んでいるわけじゃないんだけど、でも聞いてもらいたいなっておもって。大人になると黙るようになるの、それで余計なことは言わないようになるのよね、それで、そ知らぬ顔でご飯を食べるようになるのよね、で、地味に死んでいくようになるの。みんな、色々経験して、黙って死んでいくのかな。いいんだけどね、でもね、わたしは本当に色々なことがあったのよ、それをちょっと話したいと思ってね」


彼女の話に耳を傾けながら、人は皆、物語を生きているのだとわたしは体感しました。それは映画館で主人公に感情移入した物語と同じで、もしかしたらそれ以上に個別的で、個性に溢れ、それはこの世に一つしかない、あなたの物語でした。あなたは物語を初めから語りだします、特にある場面から始めるときもあります。起承転結が繰り返され、新たな登場人物が現れ、様々な場面があり、やがて、行き詰まったり、立ち止まったりします、それもあなたの物語の中の一場面で、そこにわたしは脇役としてあなたに出会い、あなたは昨日を話し、今日を話します、そして明日について二人で話し合う、やがてそこから新たな物語が生じてくる、既に新たな物語への萌芽、兆しをあなたは握っている、伏線は張られていて、あなたがそれを見出し、前に運んでいく、そのお手伝いがわたしのすることでした。あなたは消えないと思っていた不安を抱きしめ、収まりどころを見出し、本当のあなたの気持ちを燃料に、物語を進めていく。いたみに耐えて見上げていた迷いや葛藤が消えなくとも、今では、それを雲の上から涼しげに見下ろしている。あるいは、凍てついた冬の大地が融け、水が流れ、新芽が指を伸ばす、光の方向へ。

わたしはますます、あなたへの信頼を深めています。あなたは立ち止まって悩んでいる、新たな展開を必要としている、窮地にいる、しかしそれを物語ることで、あなたはご自身のストーリーを昨日から今日へ、そして明日へと運んでいくことができる。

「人は可能性のもとに生きる。個人によってあらかじめ決められた、これこそ正しいというはっきりした道はひとつもない」C.G.Jung

わたしは2003年に設立物語を書いたときと同様に、いまだ楽天家かもしれません、あなたがどのような境遇にあっても、あなたは、あなたの最高の物語を持っている、これは尊厳であり、先祖から代々受け継いできた生命の灯りです。8年の相談活動で、あなたに教わったことです。

9年目を迎え、これまでの皆様の信頼にお応えし、今後、コンテンツの充実を図ると共に、(有益な情報提供、事例集、職場の人間関係改善プログラム、社会資源のリンク集など)援助職バーンアウト防止事業、ひきこもりカウンセリング事業等、更なる相談活動の実践と研鑽を行い、カウンセリングルームSoundless voiceが皆様のお役に立てるよう推進していきます。そして、これまでと変わらずに、あなたの静かな声、深い声、音のしない声に耳をすませる場所として運営していきます。

　　　2011年9月25日　　　SOUNDLESS VOICE　　　菊池　寿









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